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抜歯後の激しい痛み

 歯槽骨の炎症が軽度であれば抜歯窩を洗浄・消毒してレーザー照射による炎症の抑制、抗生物質(ばい菌をやっつける薬)や痛み止めの処方する程度で症状が収まる場合もあります。

 歯槽骨の炎症が激しい場合は麻酔をして抜歯窩を掻爬(そうは:感染した部分を取り除くこと)する場合もあります。掻爬する事によって出血を促し新たな血餅を形成させる事も期待できます。場合によっては局所麻酔薬をしみ込ませたセルローススポンジやヨードガーゼーを抜歯窩に入れて傷口の保護をする事もあります。必要があればガーゼを定期的に取り替えます。

 掻爬をした場合も同時にレーザー照射による炎症の抑制、抗生物質(ばい菌をやっつける薬)や痛み止めの処方などを行なって症状が治まるのを待ちます。通常は数日から一週間以内には症状が治まります。

 飲み込む時の痛みや口の中の違和感があるかもしれませんが、できるだけ食事をきちんと摂って水分補給も忘れずに行なってください。血糖値が下がったり、脱水状態になったりすると傷の治りが悪くなります。

 もしも抜歯後数日経ってかえって腫れや痛みが増して来るようであれば早めに診せてください。炎症が広がる前であれば投薬や洗浄で抑えることができるかもしれません。

 抜歯の後はできるだけお口の中をきれいな状態に保ってください。また、女性の場合、可能であれば抜歯は月経予定日の最後の週(最終月経から数えて23?28日)に予定してください。この期間がエストロゲンのレベルが最低であると言われています。ただし、妊娠の可能性のある方の場合、最終月経から14日以内は妊娠の可能性がほぼない期間となりますので、この期間を選んで抜歯やレントゲン撮影を行なう場合もあります。

 うがいは抜歯後24時間以内は避けてください。24時間以降も可能であればぬるま湯の食塩水で行なってください。濃度は海水ぐらい、ちょっとしょっぱいぐらいが最適です。

 喫煙、飲酒、ストローで飲み物を飲む、つばを吐くなどの行為は少なくとも抜歯後48時間は避けてください。口に血液がたまる場合はティッシュなどにそっと出して下さい。

 抜歯後24時間は固い食物は避けてください。次の24時間は反対側では噛んでもかまいません。

 抜歯の後に差し上げた『抜歯後の注意』をきちんと読んで指示に従ってください。

 ドライソケットを生じる最大のリスクファクター(危険因子)は抜歯後の過度のうがいです。過度のうがいはせっかく固まり始めた血液を洗い流してしまいます。これでは自分からドライソケットを作っているようなものです。ドライソケットを防ぐためには歯科医師から指示された時間、きちんと綿を噛んで圧迫止血をしてください。また、止血してからも多少はつばに血液が混じると思いますが、あまり頻繁にうがいをしてはいけません。

 また口で「何かを吸う事」は血餅を吸い出して抜歯後のドライソケットのリスクを高めます。具体的には喫煙、ストローで飲み物を飲む事、つばを吐く、鼻をすする事、咳をする事などはできるだけ避けてください。

 とくに喫煙は酸素供給を阻害して傷の治りを悪くしますし、(タバコを)吸うことによって傷をカバーする血の塊(血餅)が取れやすくなります。少なくとも抜歯後48時間は禁煙してください。

 抜歯後24時間は抜歯した場所に影響しないように食事は柔らかいものをそっと噛んでください。ただ、血糖値が下がると出血が逆に止まりにくい場合もありますので、麻酔が取れたら柔らかめの食事をきちんと摂ってください。絶食はしないでください。

 抜歯後5-10%ではなんらかの歯槽骨炎を起こしているという報告もあります。血の塊が取れやすいという点では上顎のほうが下顎に比べてドライソケットを起こしやすいと思われるかもしれませんが、論文によると下顎のほうが上顎よりドライソケットを起こす可能性が高いのです。これは下顎のほうが上顎より骨が硬いので、抜歯後の出血が少ないからかもしれません。また部位別に見ると親知らずの抜歯でドライソケットになる頻度が高いと言われています。これは抜歯自体が難しい場合が多く、感染を起こしやすいのかもしれません。

 性別では女性は男性に比べリスクが高いと言われています。生理周期によるホルモンの変動が影響しているとする説もあります。経口避妊薬を服用している女性も同様の理由でリスクが高いと言われています。また、糖尿病のような全身疾患も感染のリスクを増します。

 ただ、私自身の経験ではドライソケットが起るのは、難しい抜歯の後ではなく、一見単純に見える簡単な抜歯の後に多いように思います。それはなぜでしょうか。

 血餅の保持が難しい複雑な抜歯の後や大きな抜歯窩が残る場合、または心臓病や糖尿病などの全身疾患がある場合は抜歯前後に十分な対策を行います。具体的には抜歯窩の周辺の歯茎を引張って縫い合わせて傷を小さくしたり、血餅の保持をするためにセルロースのスポンジを抜歯窩にいれたり、予め抗生物質の投与を行なう場合もあります。

 ところがこのような処置をしなくても普通に指示を守っていれば大丈夫だと思われる単純な抜歯のケースに限って、抜歯後の注意を守っていただけず、ドライソケットを起こしてしまうように思います。簡単に抜歯が終わった時に限って、患者さんにも私にも油断があるのかもしれません。全ての抜歯で、最大限の予防処置を行なえばドライソケットは防げるとは思います。しかし、抜歯は通常は保険診療で行ないますので、すべての抜歯で上記のような処置を行なったり投薬を行なうと過剰診療として保険の支払い側の指導を受けてしまうかもしれません。

 また、縫合(傷を縫う事)は多少なりともいえ体に負担をかける事になりますし、セルローススポンジを入れるということはその吸収を待つ分だけ治りが遅くなる事になります。人工物の手助けが無くてもきちんと治る状態であればなるべくは体に余分な負担をかけたくありません。

 ですから、抜歯の後は必ず指示を守って傷口と血餅を保護してください。脅かす訳ではありませんがドライソケットになると本当にかなり強く痛んだり腫れたりします。

 抜歯した当日は少し痛みがある場合もありますが、通常は痛み止めで抑える事ができる程度の痛みです。この痛みは日数が経つに連れて徐々に和らいで行きます。

 ところが、抜歯した当日や翌日はそれほどでもなかったのに、数日して激しい痛みや腫れ、場合によっては発熱をする事があります。

 このような場合いわゆるドライソケット(歯槽骨炎)という状態になっている可能性があります。それほど頻繁に起る事ではありませんが、非常に強い痛みを伴うので患者さんは非常に辛い思いをされる事になります。

 ほとんどの場合、ドライソケットは抜歯後に患者さんご自身が気をつけてケアして頂くだけでだけで予防する事ができるのです。

 まず一般的に『ソケット』といえば電球をねじ込む部分を思い出される方が多いと思います。また、PCを自作される方ならCPUを差し込む部品がソケット(ソケット370とかかの規格がありますよね)です。歯科ではソケットと言えば歯を抜いた後の骨にできる窪みを指します。

 歯を抜くと歯があった所には歯の根の形の窪み(抜歯窩)が残ります。この穴はどのようにして塞がるのでしょうか?

 通常はこの窪み(抜歯窩)に溜まった血液が固まって血餅(Clot)を形成します。他の場所の傷にできる柔らかい『かさぶた』みたいなものです。数日経つと今度は血餅の中に周囲の骨や粘膜から細胞が増殖し始めます。最終的にはこれらの細胞が抜歯窩の中に骨や粘膜を作って抜歯窩を埋めます。つまり血餅は傷口の保護をする役割と後から増殖する細胞の足場になる大事な役割があるのです。

 もし、細胞が増殖する前に血餅が取れてしまったら、抜歯窩の中にはカバーされていない骨が露出してしまいます。また、蓋がとれてしまった抜歯窩の中に食べかすなどが入り込んで時間の経過とともに腐ってしまいます。数日後にはばい菌が増殖して骨に炎症を起こし、ズキズキ痛んだり腫れたりします。専門的には「急性歯槽骨炎」と呼ばれる状態です。

 このような状態になるとズキズキと強い痛みが止まらなくなり、抜歯直後の状態よりずっと痛くなります。通常の痛み止めでは収まらないほどひどい痛みとなる場合も稀ではありません。

 炎症がもっと進むと顎の下のリンパ節や首のリンパ節が腫れる事もあります。下顎だと口が開けにくくなったり、物を飲み込むのも痛くて難しくなる場合もあります。場合によっては外から判るほど顔が腫れたり、38度以上の発熱がある場合もあります。