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2006年02月17日

●ヒールオゾン(HealOzone)法に信頼できる根拠はない

 患者さんから「先生のところではヒールオゾン治療できますか?」と質問されました。ヒールオゾン(Heal Ozone)?たしかドイツのKaVo社のHPで見た事があります。患者さんに「ところで、どこでお聞きになったのですか?」とお尋ねしましたら、「インターネットで見た」との事でした。最近は皆さん情報が早いです。

 KaVoのHPには適応症について書いてあります。

○根管治療
根管の殺菌、乾燥に。エンド治療を1回で完了することが可能です。
○フィッシャーカリエス、ピットカリエス
フィッシャーカリエスに効果的です
○根管、歯頸部カリエス
特に傷みに敏感なエリアの歯質を維持します
○矯正
確実な殺菌と予防。ヒールオゾンが効果的に殺菌を行います。
○軟組織治療
この治療分野でも、ヒールオゾンの殺菌力が効果を発揮します:ウイルスや病原菌にチャンスはありません

 では、本当にKaVo社が言うような効果があるのでしょうか。文献を調べてみました。実は、KaVoのHPにも文献がたくさん出ています。もちろん「効果無し」という文献を載せる訳がないのでかなりbias(偏見)がかかっていると思います。そこで、中立で公正であるコクラン共同計画の文献的考察(review)を検索しました。
 
 すぐにOzone therapy for the treatment of dental caries (Cochrane Review) Rickard GD, Richardson R, Johnson T, McColl D, Hooper Lという論文を見つけました。(コクラン共同計画についての日本語の説明はここ

Authors' conclusions:

Given the high risk of bias in the available studies and lack of consistency between different outcome measures, there is no reliable evidence that application of ozone gas to the surface of decayed teeth stops or reverses the decay process. There is a fundamental need for more evidence of appropriate rigour and quality before the use of ozone can be accepted into mainstream primary dental care or can be considered a viable alternative to current methods for the management and treatment of dental caries.

 つまり、この論文の著者の結論は、それぞれの研究でバイアスがかかっているリスクが高いし、効果についての評価法に一貫性がないので、虫歯をオゾンガスで治療しても虫歯の進行を止めたり治療したりできるという信頼しうる根拠は無いとの事です。さらに、ヒールオゾンが従来の虫歯の治療法の代替療法や第一選択になるためには、さらに適切で厳密で質の高い根拠が必要という言葉を結論としています。

 コクラン共同計画の論文的考察は、一般の人向けにplain language summaryを公開していますが、そちらにはもっとはっきりと"Ozone should not be considered an alternative to current treatment methods in dental practices."(オゾン療法を現在の歯科の治療法の代替手段として考慮すべきではありません。)と書いてあります。

 現在のところ、ヒールオゾン法は厚生労働省の認可を受けていませんので、日本で実施すると100%自費治療です。KaVoの機械自体がかなり高価なので、治療自体も高額になると思います。

 私はヒールオゾン装置は持っていませんが、基本的に根管内へのレーザーを照射を併用して根管治療は一回で完了しています。アメリカでも滲出液が多い場合以外は根管治療は基本的に一回で終了しますので、術式をきちんと守ればレーザー無しでも根管治療は一回で終わることが多いと思います。
 
 フィシャーカリエスについても通常は削りません。レーザー照射とフッ化物の塗布で終わります。根管や歯頚部のカリエスで知覚が過敏になっている時もレーザーを照射とコーティング剤の塗布でかなりの確率で切削が必要ありません。場合によっては表面を少し研磨してコンポジットレジンで修復する場合もあります。

 矯正については矯正装置の周囲の虫歯が心配ですので、月に1度の調整の時に担当の衛生士がPMTC用のチップできれいに清掃し、フッ素のペーストを塗布しています。軟組織の炎症は絶対に炭酸ガスレーザーの照射が効果的です。

 ヒールオゾンは決してなんでも削らずに治せる魔法の治療ではありませんし、従来の方法でも可能です。あなたは、それでもエビデンス(根拠)が無いヒールオゾン治療を受けてみようと思われますか?

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