子供たちが塾で家にいなかったので、ひさしぶりにDVDを借りて来て24 シーズンIVを見ました。最近忙しくてまだシーズンVに追いついていません。
ストーリーにはあまり関係ないのですが、監視ビデオの記録を確認するためにジャック・バウアーが警備会社まで行くシーンがありました。CTUはいつも好き勝手に監視ビデオの画像をオンラインで監視しているんだから、わざわざ行く必要は無いだろうと思います。シナリオライターもそう思ったらしく、「なんで、わざわざ行かなくてはならないんだ?」「警備会社がオンラインじゃないんです。送ってもらっている時間が無いんです。」という妙に説明臭い台詞がありました。
ともかく、警備会社に行くと映像はビデオではなく、動画ファイルに保存されているようです。セキュリティの関係でわざとインターネットに接続しない会社は多いのですが、社外のパーティ会場の監視カメラの映像は専用回線なんでしょうか?
人物を特定出来そうになった直前に敵に襲われてしまいます。瀕死になった警備会社の社員にデータをコピーする方法を聞くと、「フラッシュメモリにコピーしろ。オレのポケットの中にある。」だそうです。
フラッシュメモリーにコピーできるぐらいならネット経由で送れよ!とつい突っ込みを入れたくなるシーンです。24ではジャック・バウアーはPDAに色々なデータを送ってもらったり、衛星で犯人の車を追跡したりしますが、本当にそんな事できるの?というようなシーンも沢山あります。
アメリカでも同じような事を考えている人がいるらしく、useit.comにUsability in the Movies : 映画に出て来る(IT機器の)操作性 - 10大NG集という記事がありました。
1. ヒーローはどんなユーザーインタフェイスでも即座に使いこなす。
(The Hero Can Immediately Use Any UI)
どこかの会社に侵入(もしかして外国や異星かもしれませんが)した時、映画の主人公なら1分以内に完全にシステムやアプリケーションの使い方を理解してしまいます。おそらくこれが映画が描く最も非現実的なシーンです。
いや、たしかにどんな会社でもOSにWindowsを使っていて機密書類をWindows Wordで保存してくれていれば問題ないんですけれど。この間、学会で台北のホテルに泊った時、必要があってビジネスセンターでPCを使わせてもらったのですがキーボードが中国語配列ですごく苦労しました。少なくとも私はヒーローにはなれないみたいです。
2. タイムトラベラーでも現在のシステムを使える
(Time Travelers Can Use Current Designs)
過去から来た人が現在のシステムを使える筈がありません(Macintoshユーザーは多少有利かもしれませんが)。未来から来た人なら現在のシステムを使えると思うかもしれませんが、例えばDOSのコマンドラインを見たことの無い人がDOS時代のコンピューターを使いこなすにはずいぶんと時間がかかる筈です。
私はかろうじてMS-DOSのコマンドラインのコマンドをいくつか覚えていますので、MS-DOSで動いているPCからフロッピーディスクにファイルをコピーして盗んで来る事ぐらいは出来そうです。しかし、intelの4040とかの機械語になるともう覚えていません。
3. 3次元の入力装置とディスプレイ
(The 3D UI)
映画「マイノリティリポート」にも出てきましたが、3次元の入力装置があったとして、ずっと手を空中に上げていると疲れます。表示装置も10年以上前から3Dのディスプレーがありますが、実用性はありません。3Dはデモ用、2Dは仕事用です。
20年以上前にCTの3次元画像表示が可能になった時、放射線科の教授が同じ事を言ってました。「3Dは患者さんに説明するのには良いけど、診断は2Dだよ。」そう言えば私もインプラントのCT画像の診断は2D画像で、患者さんへの説明は3D画像で行なっています。
4. データの規格統一が簡単
(Integration is Easy, Data Interoperates)
24でジャック・バウアーはCTUに電話していろいろなビルの設計図を送るように頼みます。外部からファイルがCTUのメインフレームに転送されると、ジャックは彼のPDAへ転送してもらいます。そして、「奇跡中の奇跡」なんですが、そのファイルは何もしなくても読み込み可能です。(さらには転送速度は貧弱なアメリカ国内のモバイルネットワークの速度からすると恐ろしく高速です。)
そもそも、国内のビルの平面図を管理している部署(消防署か建築基準監督署でしょうか)が本当にあれば、統一された画像形式でどこかに保存されている筈です。それに、どこかのビルに突入というのは24の世界では日常茶飯事です。だとすると官給品?のPDAにデータ転送して表示できてもおかしくないようには思います。平面図も画像データーじゃなくてベクトルデータで転送すればデータ量が圧縮できますが、国内にある全ての建物の平面図をベクトルデータに変換するという難題は残りそうですね。
5. アクセス拒否/アクセス承認のダイアログ
(Access Denied / Access Granted)
使用権限の無いシステムに侵入して、ヒーローがパスワードを試すと、大きなフォントで「アクセス拒否」と表示されます。でも、大惨事がおこる数秒前、ついに正しいパスワードを入力すると「アクセス承認」というこれまた大きな表示がでます。普通のシステムだったら、パスワードが正しければ「アクセス承認」なんてダイアログを表示せず、すぐにアプリケーションのホーム画面が表示されます。
そう言えば、そうですよね。ただ、ソニーバンクのオンラインシステムはログイン後に「パスワードを確認しました」画面が出ます。その時、パスワードを設定してからの日数が出て、定期的にパスワードを変更するように求められます。もちろん、フォントはそんなに馬鹿でかくはありません。
6. 大きなフォントサイズの文字
(Big Fonts)
「アクセス拒否」ダイアログに加えて、映画に出て来るコンピューターの画面のフォントは必要以上に大きいです。もちろん、観客が読みやすいようにという配慮なのですが、実生活ではほとんどの場合、小さすぎるフォントサイズに悩まされる事の方が多いのです。
そういえば、CTUのログインダイアログのフォントも異常に大きいですね。スパイをしている同僚のアカウントにログインするとき、フォントが大きいので5mぐらい離れていたのに、「あんた、今、私のアカウントにログインしてたでしょう?」と見つかってしまいます。だいたい、IDが簡単に読まれてしまうのもセキュリティ上問題だと思います。
7.スタートレックの話すコンピューター
( Star Trek's Talking Computer)
例えばスタートレックに出て来るコンピューターでは文字出力よりずっと情報量の少ない音声入出力が使われています。データ量から考えると3Dインタフェイスよりさらに情報量は少なくなります。
Macintosh OSXだとSpeech機能を使えば不完全ながら音声入出力が可能です。読み上げはそこそこ判りますが、認識のほうは気合いを入れて発音しないと認識してくれません。キーボードのショートカットのほうが100倍便利です。
8.リモコン(魔法のコントロール)
Remote Manipulators (Waldo Controls)
Tomorrow Never Dies(ツゥモローネバーダイズ)でジェームズボンドはBMWの後部座席からエリクソンの携帯電話型のリモコンで車を操作して悪人を振り切ります。車の運転をする時にハンドルやアクセルの替わりにタッチパッドやジョイスティックを使わないのは、単にハンドルやアクセルが優れたコントロールシステムだからです。
友人にラジコンマニアがいますが彼のスティックさばきを見ていると、1:1の縮尺のラジコンがあれば充分運転できそうな気がします。実際に福祉車両としてジョイスティック車が市販されているみたいですが、悪人の車を振り切れるかどうかかは判りません。
9. You've Got Mail is Always Good News
映画では重要なe-mailしかメールボックスに届いていません。実社会では底なし沼のようなスパムメールや締め切りを過ぎた仕事の催促、クライアントからの際限無い要求のメールなどで溢れています。
今、私のメールボックスを見てみたら14通のメールと150通のスパムメールが来ていました。14通のメールのうち、本当に重要なのは1通だけでした。
10.「これはUNIXだわ。簡単よ。」
"This is Unix, It's Easy"
ジュラシックパークで12歳の女の子がパークのセキュリティシステムを操作して皆を助けなくてはならなくなってしまいます。彼女は端末に向かうと不滅の台詞を言います。「これはUNIXシステムだわ。私、どうすれば良いか知ってる。」
12歳の女の子がUNIXに詳しいかどうかは別にして、彼女はviエディタを使わなくてはならなかった筈です。悪名高いバラバラなユーザーインターフェイスを考えるとシステムの使い方を学ぶのにはかなり時間が必要な筈です。
viエディタ、昔使ってました。コントロールキーの組み合わせを覚えてしまえば何とか使えるんですが、できればもう二度と使いたくないです。
まあ、所詮は映画なんで虚構の世界なんですが、このような誤解が広がる一般の人が自分の能力が低いと思い込んだり、あまり実用性のない音声入出力や3Dデバイスの研究開発に期待が集まったりというような問題があると指摘しています。